第12章 ★桜の秘め事(~P182)
「あっ、やっと来たわね」
紅葉に迎えられると、既に部屋には他に二人がいた
紅葉は古株のため、与えられた部屋は広い
四人いてもまだ余裕がある程だ
「あれ?他のお姉さま方は?」
桜が首を傾げると、参加者の一人、桔梗がクスっと笑う
「先月から参加は私たちだけよ」
「えっ、そうなんですか?」
傾けた首はなかなか戻る事がない
この女子会は毎回皆が参加すると聞いていたからだ
本家で住み込みで働く女は桜をいれて八名
つまり四名が不参加ということだ
桔梗が説明を続ける
「他の四人はね、本気で八千代様を狙っていたのよ。だからふてくされてるのよね」
「八千代様を…?」
「えぇ。最初から望みがないと何度も私たちは忠告したのだけれど、聞く耳を持たなかったのよ。それで八千代様がご結婚されたから、拗ねちゃってるの」
はぁ……と桜は呆れてしまう
本家で働く女は一度は八千代の婚約者候補になったが、全員白紙にされている
桔梗ともう一人の参加者、紗良は既に結婚しており、当主の妻の座なんて興味ないといった状態だ
独身の紅葉も興味が無いらしいが、数多の求婚を受けており、断るのが一苦労だと話しているのを聞いたことがある
「まぁ、いいじゃん。乾杯しよー!」
紗良の掛け声で乾杯をする