第11章 媚薬の熱
「八千代様、私は何人もの男から相談を受けておりました。皆、内容は同じです。妻の体力が無さすぎると」
「…体力、だと」
今にも飛びかかりそうな八千代は帳に押さえられたまま紫村の話に耳を傾ける
一体何が目的なのか確認する必要があったからだ
「えぇ。夜の営みの話です。鬼の血を引く黒闇家の男は体力が多く性欲も強い。しかし、女性は当然、男程の体力はない。となれば、満足出来ない状態で妻が寝てしまうということは昔から言われておりました」
それは確かに聞いたことがある
だが、八千代たちには関係ない話だった
鈴音は体力が無い中でも必死に八千代を求め、受け入れてくれるからだ
「そこで、私はとある薬の開発に着手したのです」
「…媚薬か」
「ご名答!昔の資料にありましたから、媚薬は三ヶ月程で完成しました!しかし…それは効果が強すぎたのです」
わざと間を開けて紫村は八千代を見る
いちいちイライラする奴だ
「女性が媚薬を服用したところ、今度は立場が逆転。男性が全てを絞り取られ、それでも女性が満足出来ないという状況になってしまったのです」
「鈴音に飲ませたのはその媚薬だと?」
「はい。媚薬は少し効果を抑える必要があります。ただ、私は気になったのです!黒闇家で最も体力があると言われている八千代様なら、この媚薬に勝てるのではないかと!」