第11章 媚薬の熱
長い廊下を走り抜け自室の襖を勢いよく開ける
するとそこには倒れた鈴音と紫村の姿があった
「おや、思っていたより早く来られた」
紫村は八千代を見て不敵に笑う
「鈴音!?大丈夫か!?」
紫村の横を抜け、倒れている鈴音の肩を揺する
その目はどこか虚ろで八千代を捉えようとしない
鈴音の口の端から赤いものが垂れていたが、どうやら血ではないようだ
「…紫村。鈴音に何をした」
紫村に視線を向けるが、奴はひょうひょうとしたままだ
「なぁに。ちょっと実験に付き合って貰おうと思っただけですよ」
「実験…だと…!?」
紫村の勝手な都合で鈴音が得体の知れない液体を飲まされた
他の男が鈴音に触れたと考えるだけで怒りがこみ上げる
「ふざけんな!!」
「お待ち下さい八千代様!!」
殴りかかろうとした八千代を止めたのは少し遅れてきた帳だった
八千代に抱きつき、必死にそれを止める
「帳、離せ」
「いけません!貴方が殴りかかれば紫村は…」
「おや?帳くんは私の命を心配してくださるのですか?」
怒る八千代を前にして、紫村は怯えたような、そして安堵したようなフリをした