第10章 病に勝つのは
一人になった鈴音は泣くもんかと必死に堪える
八千代が心配で心配でたまらない
だが、ここで自分がわめき叫ぶのは違う気がした
「…いつも、どうしてたんだっけ」
独り言がこぼれる
だいたい側に八千代がいて、それぞれ別の事をしていても同じ空気を吸っていた
それなのに今はこんなにも胸が押し潰されそうだった
八千代が倒れた事で村全体はざわつき始める
皆が数々の不安を口にした
…今の状況で私に出来ること…それは祠結界の強化だけ
鈴音は桜を呼び出すと直ぐに出かける準備をお願いする
自分も一緒に行くと言ってくれた桜の申し出を断り、鈴音は馬に跨がると直ぐに祠へと向かった
北の祠は相変わらず白い花に囲まれて美しい
それなのに、隣に八千代がいないだけで霞んで見えるから不思議だ
いつもはここで八千代と交わり、結界を強化する
二人でなら何倍もの力を出せるが、今は鈴音一人
亀裂が塞がれた今、二人が出会う前と同じ状況である
となれば、鈴音一人でも問題は無いのだが…
「ダメよ、鈴音。ちゃんとやる気出さなきゃ!八千代さんが元気になった時、がっかりされたくないもの」
鈴音は気合いを入れて結界強化を行った