第9章 二人のこれから
「この紐を祝言を上げるまで互いの左手の小指に結びつけておくのですが…ダメですか?」
「いや、悪くない」
そう言って八千代は左手を差し出す
鈴音は笑顔を輝かせるとさっそく紐を結びつける
落ちないようにきつく結べば今度は鈴音の番だ
八千代に紐を渡せば鈴音の小指に紐が結ばれる
「そんなに嬉しいことなのか?」
笑顔が止まらない鈴音を見て八千代は不思議そうな声を出す
鈴音は大きく頷いていた
「小さい頃からの憧れだったので。それに、これは赤縄(セキジョウ)の絆と言って、ずっと一緒にいられますようにって願いが込められているんです」
「赤縄の絆か、確か由来は他国にあったはずだが」
「ご存知でしたか?今では運命の赤い糸、なんて言われてますよね」
小さい頃、何度か見た赤い紐を付けた女性
それが外れる頃には綺麗なお嫁さんになっていたのだ
小さい女の子は皆それを見て、いつか自分もお嫁さんに…なんて憧れを抱くのが普通だった
「ふぅん?じゃぁ夢が一つ叶ったってわけか」
「はいっ!」
嬉しくて八千代の胸に飛び込む
背中に回された腕は鈴音を優しく包み込んでくれた