第2章 力の増大
祠は任せましたよ
そう言ってお付きを帰すと鈴音は木々の間からわずかに見える神社を確認した
距離にして二百メートル程
それなのに一人になった途端緊張した
恐る恐る近づけば、すでに馬が一頭繋がれている
ということは、相手はもう来ているのだ
神社には人気は無いが、中からぼんやりとした光が漏れている
待たせてはいけない
鈴音も馬を繋ぐとすぐに扉をノックした
「……失礼します」
返事は無かった
しかし、鈴音はゆっくり扉を開けて中を覗く
この社の一番奥に男の影を確認した
「あ、あの。遅くなって申し訳ありません」
先ほどより声を大きくすれば、影はゆらりとこちらを向く
「わっ…」
思わず驚きが声に出ていた
そこにいた男は自分が想像していた人物像と全く結び付かなかったからだ
夕日と蝋燭に照らされ、黒い髪が輝く
着物は何枚か羽織っているようだが、乱れ、雑な印象を受けた
そして何より衝撃的だったのは男が若かった事だ
整った顔立ちは美しく、白霧一族にもこんな美丈夫はいない
「……あんたが桜楼巫女か?」
聞こえてきた声は低い
慌てて鈴音は返事をした
「そうか。入れ」