第2章 力の増大
翌朝、いつもより早く起きてしまった鈴音は禊を済ませると身支度をした
「こんな時にあれですが、お美しいです、鈴音様」
身支度を手伝ってくれた巫女が感嘆の声を漏らす
鏡に写った鈴音は特別な儀式でしか身に付けない正装をしており、うっすらと化粧もしていた
「ありがとう。私は立派に務めを果たして参ります」
数名の供を引き連れ、早速領境付近まで進む
道中、考えていたのは黒闇家のことだ
鬼の血を引くと言われているが
鬼の姿をしている、牙がある、なんて噂も絶えない
まさか、食べられたりしないわよね?
不安が襲うが、もう後戻りは出来ない
言葉は通じるようだし、白霧家と同じく千年もの間、祠を護り続けているのだ
悪い人たちではないのだろう
慣れない馬を走らせ続け、領境に到着したのは日が傾き始めてからだった
そこは森の中にあり、やや涼しい
「鈴音様。我々はここから先へ進む許可は出ておりません。どうか、お一人で…」
「えぇ。ありがとう。道は覚えたから一人で帰れるわ。だから貴方たちは先に帰っていてください」
鈴音がそう告げるとお付きは驚きの声を上げた
「し、しかし!万が一鈴音様の身に何かあったら…」
「大丈夫ですよ。せっかくの機会です、相手と話がしたいので」