第5章 可愛げのあるドジと海上オークション
急いで振り返るとそこには1人の男が立っていた
「まさか…
オークション会場の扉を開けてしまうとは…
お陰様で計画が台無しですよ…」
「流石に乗員乗客を閉じ込めて〜
沈没させるのは心が痛みましたから〜」
「やはり、計画を…
どこから漏れたかわかりませんが
貴方達も生きていられるなんて
思わないでくださいね」
じりじりと近づいてくる男
豪華客船を沈没させる計画の
犯人ともいえるだろう
「生憎、ここで死ぬなんて
微塵も思っていませんので
サラッと帰らさせてもらいますね」
当たり前だ
ZI7に復讐を果たすまで死ねない
「…ティナ!」
エリオットが私の腕を引っ張り
胸の中へ抱き寄せる
ーーバンッ!
「なかなかやるな…
ナンル文字を解読しただけあるな」
「恐らく今、僕らに銃を撃ってきたのが
計画の主犯です〜…」
そのまま抱きしめられながら
小声で教えてくれた
「スパイじゃないかって疑ってるから
悪いけど死んでもらうよ」
そう言って立て続けに銃を発砲する男
私とエリオットはバラバラになって逃げる
スパイってバレてたか…
エリオットとふと目が合う
〝僕が先に海に飛び込むので
ティナはその後にきてください…〟
目だけで了解の合図を送る
大丈夫…
船の外壁をつたって降りれば
海に勢いよく飛び込む必要はない…
悶々と考えていたその時
「…死ね」
いつの間にか後ろにいた男が銃を構えていた
そして引き金をひく…
咄嗟にかわそうと動くが
その時もう1人の男が背後にいた事に気がつく
そいつは私を取り押さえていて…
まずいこのままじゃ心臓に銃弾が当たる…!
全身を使って、身体を動かして
銃弾を避ける …が
そのまま柵を越えて黒い海へ落ちていく
もがきながらも男と離れようとする
空中だとなかなか自由に動けない…
クソッ…
このまま落ちたら私は…!
ーーーザッパーン!!
2人分の水しぶきと共に私は海に飛び込んだ
冷たい海水にが全身を包む
意識が遠のいていく………
ーー
常に一定の体感温度
それは心地よい温度
たまに目を開ける
水で視界がぼやけているが
誰かがずっと私を見ている
力が抜けていく
まるであの日のように
でも息が苦しい
それでももがけない
ーー