第5章 可愛げのあるドジと海上オークション
フルコースのディナーはとても美味しかった
そしてエリオットの洞察力はとんでもなかった
「いやぁ〜 それにしても
ターゲットらしき人分かりませんね〜」
エリオットは分からないと言っているが
実際ディナー中も
「あの男性の隣に座ってるのは妻じゃなくて愛人ですね〜」
「あの子供の兄弟のお兄ちゃんは今は世話焼きですけど、普段はお世話してないですよね〜」
「今通った人の職業は警察ですよね〜」
とペラペラ喋っていた
私の事、女って分かってるんじゃない…?
いや、でも聞かないでおこう…
時刻は19時45分
オークションまで後15分だ
「エリオット
オークション会場にそろそろ行きませんか?」
「そうですねティナ〜
僕もこれから今日一番頑張りますよ〜!」
私もエリオットに負けないように頑張る…!
大きくて豪華な扉を開けると
中には既に大勢のセレブが席に座り
今か今かと待っていた
数千もの席が人で埋まる様子は…
「すごいですね〜… 圧巻です…」
そもそもターゲットは何人なのだろうか
1人?複数?
とてもじゃないけど見つかる気がしない
小さなステージから離れている
上の方の空いている席に座った
ガヤガヤと会場全体が共鳴している
「セレブのオークションって
何が出てくるんでしょ〜ね〜?
世界遺産とかですかね〜?」
「あっ、そういう感じなんですか!
私は万能な奴隷とかかと思ってました!」
そんな会話をしている内に照明が暗くなり
小さなステージだけ明るくなる
「淑女、紳士の皆様。
本日はお集まり頂きありがとうございます!
さて、これからは豪華客船旅の目玉となります
オークションの開催です!」
司会が初めの挨拶をすると
会場から割れんばかりの拍手だ
これから何がオークションにかけられるのか…
そしてターゲットは誰なのか…
エリオットも拍手をしているが
表情は真剣そのもの
彼の洞察力で何千もの人を観察しているのだろう
私もオークションよりもお客さんを見なきゃ…
「まず、初めの商品は… こちらです!
今は亡き天才画家タルームの本物の巨大絵画!
先日、タルームのあった家の下から見つかったそうです。
それでは、10万コナーからスタート!」
最初の競りが始まった
会場全体の熱気が突然上がったのを感じた