第11章 松栢之操【ショウハクーノーミサオ】
城に戻り直ぐにでもの部屋へ行こうと思ったが、全身に戦の名残りを残したままに触れるのは躊躇われた。
先ずは身を清めるべきであろうと天主に入ると、其所には………
畳の上で仔猫の様に身体を丸めて眠るが居た。
ゆっくりと近付きその傍に屈み込むと、の瞼が開いて俺を見上げる。
まだ寝呆けているのか、ぱちぱちと瞬きを繰り返すの頬を撫でながら
「貴様は俺が居ない間も此処で……
一人で眠っておったのか?」
そう問う俺の声は僅かに震えていた。
満面の笑みを浮かべて大きく頷いたが、俺の首に腕を回し抱き付いて来る。
「待て……。
俺は穢れている。
このままでは駄目だ。」
の両肩に手を掛けてその身体を引き離そうとしたが、は一層力強く俺に身を寄せた。
「、駄目だと言っている。
俺は穢い……っ!」
言い終わらない内に、の舌が俺の首筋に這わされる。
常であれば擽ったくて我慢為らない筈であるその行為が、今宵は何故か心を震わされて仕舞う。
「………」
次にの舌は俺の頬に移動して、何度もぺろりと舐め続けた。
「……貴様が俺を清めてくれると言うのか?
本当に……貴様という女は………」
そして俺は、戦の名残りを……
血の匂いを漂わせたままの身体でを抱いた。