第11章 松栢之操【ショウハクーノーミサオ】
の肩を一層強く抱き寄せる。
そしてもう片方の手を広げて、城下に向かって差し出した。
「……見ておれ。
俺は必ず『天下人』と成り、この世の中を変えてみせる。
全ての民が平穏安寧に暮らせる世の中を必ず作ってみせる。
もう過去の貴様やあの男の様な存在など必要の無い世の中だ。
だから、俺の傍を片時も離れず……
俺と共に最期まで見届けるのだ。
分かったな、。」
そんな世の中になれば、あの男の存在価値を奪って仕舞う事になる。
だがきっと、あの男ならば「仕方ねーなー」と笑って許してくれるであろう。
そしてその先は『家畜』としてでは無く、『人』として生き抜いてくれる事を俺は心底願っている。
「貴様は泥の中で咲き誇った一輪の蓮だ。
そんな貴様を手折って…………
俺だけの物にしてやる。
生涯、俺の手の中でのみ咲き続けるが良い。」
傍に居るはと言えば、理解しているのかいないのか……
唯、俺の顔を見上げてにこにこと笑っていた。
登り始めた朝陽に照らされて、俺はの顎を取り口付ける。
の両腕も俺の腰に回された。
天主の張り出しでこんな行為を晒すなど、また秀吉に叱られて仕舞うかもしれぬな。
それでも、朝陽が登り切っても尚………
俺との唇は、まだ離れる気配は無かった。
了