第9章 屋烏之愛【オクウーノーアイ】
の頬を涙が伝い落ちる度、俺の焦燥感が煽られて行く。
の言いたい事を汲み取れない己の不甲斐無さにどうしようもなく苛立って仕舞う。
見れば自身も俺に伝わらないもどかしさを感じている様だ。
「……俺はどうすれば良いのだ?
どうすれば貴様の涙は止まる?」
するとはこくりと一つ喉を鳴らして
「………っ?」
両手で俺の夜着の襟元を寛げ始めた。
「……俺にも…脱げ…と言うのか?」
または頷く。
「俺に触れたいのか?
………貴様も俺が欲しいと言うのか?」
途端にの頬が紅く染まり目を反らしたかと思うと、夜着を開けられ露になった俺の胸にそっと口付けて来る。
そのまま胸に顔を埋めるの涙を指で掬い取り
「では、これは歓喜の涙……だと言うのだな?」
そう耳元で囁いてやると、の両腕が俺の背中に回された。
全く……女の涙程、不可解な物は無い。
それに惑わされて狼狽える男の愚かさと言ったら……。
だが、理解出来なければ一つ一つ問うてやれば良いのだ。
一つ一つ……貴様が俺にどうされたいのか、を。
「相分かった。
では、遠慮はせぬ。
この先はもう、俺を蹴り飛ばすなど許さぬぞ。」