第9章 屋烏之愛【オクウーノーアイ】
ここまで告げても何も行動を起こさないを見て、俺は先に進む事にする。
「では……貴様の全てを晒けて見せろ。」
しゅるりと腰紐を解き、寝間着の合わせを拡げて……
目に飛び込んで来たの裸体に俺は言葉を失った。
白く艶やかな肌に隙間無くびっしりと刻まれた傷跡。
刀傷だけで無く、焼かれた物や掻き毟られた物…兎に角、その執拗さに吐き気がする程だ。
何よりも計った様に着物で隠れる位置にのみ残されている事が、この傷を付けた奴等の薄汚い狡猾さを如実に表していた。
『十参號を抱くのはあんたにしか出来ない』
そう言ったあの男の言葉が、今なら痛い程理解出来る。
確かにこの身体を何の蟠りも無く愛してやれる男は少ないであろう。
ふと気付けばその全身を舐める様に見渡し、眉を顰める俺に向けられたの目が悲し気に揺れていた。
俺のこんな顔をに見せて仕舞うのは絶対に許されない事であったのに……。
「すまない……。
不安にさせて仕舞ったな。
貴様が一人で闘い抜いた結果のこの身体……
俺はこれ以上に美しい身体を知らぬ。
本当に貴様は……どんな高貴な女よりも気高く美しい。」
は俺が何を言っているのかは理解していないだろう。
だが、どうやら想いは伝わった様であった。
僅かに表情を綻ばせたに、俺も安堵の息を漏らす。
「さあ……では、この美しい身体を存分に愛でさせて貰おう。」