第9章 屋烏之愛【オクウーノーアイ】
の額にそっと口付ける。
その後は瞼、鼻、頬へと唇を滑らせて行った。
……まだ大丈夫だ。
は身動ぎもせず、じっと俺を受け入れている。
そして桜桃の様な愛らしい唇を二度三度と啄んでから
「、口を開け。」
そう囁いてやれば、驚く程素直にの唇が開いた。
「……良い子だ。」
髪を撫でた手で後頭部を捕まえ、開かれた先へ舌を差し込んでやる。
その中にじっとりと舌を這わせると、訪れたのはまるで砂岩を舐め回している様な奇妙な感触。
とても人間の粘膜とは思えぬ、ざらざらとした触感であった。
恐らくこれも、喉を潰したとされる劇薬の影響なのだろう。
通常ならば嫌悪を感じるその触感が俺には何よりも愛おしく思えて、一層激しくの口腔を貪った。
一頻り堪能し終え唇を離すと、その行為に対応出来なかったの顎には幾筋も唾液が滴っている。
それを親指で丁寧に拭ってやりながら、俺は漸くを褥へ押し倒した。
真っ直ぐに俺を見上げるの余りにも無垢な視線。
こんな視線を向けられれば、俺の成そうとしている事はを穢す結果になるのではないか…と不安が湧き上がる。
だが今はその不安すらも凌駕する程の欲望に捉われているのだ。
もう唯、只管にが欲しい。
「貴様は声が出せない。
俺を上手く拒む事も出来ぬであろう。
そこに付け込んで仕舞う穢い俺を許せ。
だが、どうしても耐えられないと成ったら行動で示せば良い。
俺を殴り付けても、蹴り飛ばしても構わん。
さすれば俺は、そこで貴様を諦める。
………自信は無いがな。」