第1章 帰って来た従兄弟
それから数日…
大和は頻繁に宇菜の家を訪れるようになっていた
葉子が仕事で不在にすることが多く、食事を一緒に取るのが普通の状態だ
大和の父親はまだオーストラリアにいるらしい
今回は葉子が日本への転勤が決まり、それに大和が付いてきた形となったようだ
「大和くんも大変よね。中学三年で学校が変わるなんて」
「いえ。僕はなるべく早く日本に戻ってきたかったので」
「でもすぐに受験よ?大変じゃない」
とある夕食の時間
明子と大和の話を聞きながらも、宇菜はテレビから流れるニュースを見ていた
ぼんやりしていると不意に宇菜に声がかかる
「宇菜ちゃんは高校どこ?」
「私?桜木高校だよ。ここから電車で二つ隣の駅」
「ふーん。そっか。じゃぁ僕もそこにする」
決めた!と大和が言い出すと宇菜も明子も目を見開いた
特に動揺したのは明子だ
「大和くん!?宇菜が通う高校は平凡よ?偏差値はごく普通の高校なの!」
明子の言っている事は最もだが、ちょっぴり傷つく
でも焦る気持ちもわからなくはない
葉子が言っていたのだ
大和が成績優秀で大学から既にいくつも声がかかっていたのだと
そんなエリートを平凡な高校に通わせるなんて
当然誰もが驚くだろう
だが当の本人はけろっとしていた
「勉強はどこでもできます。でも、宇菜ちゃんと一緒の学校に通えるチャンスは早々ありません」
満面の笑みで言うものだから、さすがの明子も固まってしまった