第1章 帰って来た従兄弟
大和は日本で流行っているものをこまめにチェックしていたらしく、とても詳しかった
宇菜が知らないインディーズのバンド名が飛び出してくるほどだ
小説や漫画も詳しく、逆に教えてもらう状態になっていた
「すごいね、大和くん」
「そうかな。日本に戻った時、宇菜ちゃんと話が合えばいいなと思って調べただけだよ」
「……うっ」
さらりと大和は恥ずかしいような嬉しいような事を言ってのける
…慣れるのよ宇菜
大和くんは海外生活の方が長かったんだから
こういうのは文化の違い
日本人がおとなしすぎるだけなのよ、きっと
宇菜は確認するように自分に言い聞かせる
とにかく大和の言動に慣れないと身が持たなそうだ
「ねぇ、宇菜ちゃんは何色が好き?」
大和の突然の質問に宇菜は顔を上げる
「私は…ピンクが好きかな」
「そうなんだ。ピンク、似合うよね」
そう言って大和は宇菜の頭から足の先まで視線をずらす
今日は薄いピンクのワンピースに白いパーカーを羽織っただけのラフな格好だ
もちろん、お気に入りの服でもある
「大和くんは何色が好きなの?」
「うーん。僕は白と黒」
「へぇ。両極端だね」
「そう。どっちも選べないんだ」
少し変わっているが、大和の笑顔に宇菜は癒されていた
あまり気にしない様にしていたが、周りにいた女の人たちが大和の笑顔を見て嬉しそうに声をあげる
どうやら大和は目立ってしまうらしい