第1章 帰って来た従兄弟
落ち着け、私…相手は大和くん
何をドキドキすることがあるっていうの?
彼は従兄弟
だから何も意識することは無いのに
そう自分に言い聞かせると
「宇菜ちゃん?」
すぐ目の前に大和の姿が現れる
音もなく距離を詰められていたようだ
先ほどは座っていて気づかなかったが、大和の目線は宇菜よりわずかに高い位置にある
昔は宇菜より背が低かったが、そんなのはもう十年も前の事だ
「宇菜ちゃん。さっきはちゃんと挨拶できなくてごめんね」
「えっ?」
「久しぶりに宇菜ちゃんに会えて凄く嬉しくて。上手く言葉にならなかったんだ」
少し照れたような大和の笑顔に宇菜は顔が熱を帯びていくのを感じた
「そ、そうだったの。私もね、大和くに会えて嬉しいよ」
「……本当に?」
すらりとした腕が伸びてきて宇菜の手に触れる
自然に指をからめられ、宇菜の心臓が高鳴る
「ややや、大和くん?」
海外生活が長くてスキンシップの感覚が異なるのだろう
それはすぐに理解出来たが、体は素直じゃない
「なに、宇菜ちゃん?」
「え、っと。その…」
なんて言っていいかわからずにいると
大和がクスッと笑う
恥ずかしいな…
思わず俯いてしまうと今度は腰に手を回された