第1章 帰って来た従兄弟
「もう平気?」
やはり冷静な大和は微笑みを浮かべながら宇菜を見下ろす
「大和くん…なんで、あんなキス…」
恥ずかしくて死にそうだ
それなのに
「言ったでしょ。宇菜ちゃんとキスしたかったから。僕がキスをしたいと思うのは宇菜ちゃんだけなんだよ」
そんな言葉が嬉しいなんてどうかしてる
恋人ではない従兄弟とのキス
あんなに濃厚な…
「な、なんで…」
なんで私とキスしたかったの?
そんな言葉は飲み込んでしまった
というか恥ずかしくてそれ以上聞くことができない
「ははっ。本当に可愛いね、宇菜ちゃんは」
ぎゅぅっと抱きしめられる力が増す
もう、何も考えられない
それくらい宇菜は思考能力を失っていた
翌日、大和の態度はいつもと変わらなかった
「おはようございます、明子さん」
「おはよう、大和くん」
爽やかな笑顔でうちにやってきて朝食を食べる
「宇菜ちゃんもおはよう」
「え、あ…おはよう」
あまりの普通な態度に昨日のことは夢だったのではないかと疑いたくなる
昨日はいつ大和が帰ったか覚えていない
気がつけば一人になっていて夢でも見ていたんだと赤面した
しかし、唇の感触を思いだし何度も悶絶したのだ
あれはやっぱりリアル…いや、夢
何度も考えて頭がパンクした宇菜は意識を失うように寝ていた
そして朝、枕元に置かれたままだった漫画が再び宇菜を混乱させ、今に至る