第1章 帰って来た従兄弟
宇菜は動けなくなっていた
からかわれてるんだ
そう思いたいのに、熱のこもった息が耳に当たる度に大和が苦しそうに声を出す
「ねぇ、宇菜ちゃん。どうしてこっち向いてくれないの」
「……っ」
色っぽい声に惑わされそうになる
年下の、ましてや中学生とは思えない雰囲気に飲み込まれそうだった
「大和くん…からかわないで」
「からかってないよ。振り返ってくれたら僕がどれだけ本気か教えてあげる」
「なっ…」
頬に添えられていた指がゆっくりと唇をなぞる
小さい頃、大和と何度かキスをした
そんなこと、とっくに忘れてると思っていたのに大和は覚えていたのだ
「宇菜ちゃん」
もう何度名前を呼ばれたかわからない
その度に宇菜は胸がしめつけられるようだった
「大和くん…」
意を決したように宇菜は振り向く
ゆっくりというよりはぎこちない感じだ
それでも大和は満足そうに笑った
「宇菜ちゃん、真っ赤」
「だって…」
「じゃぁ目を閉じて」
「うっ…」
漫画では振り向くと同時にキスをしていた
大和はそうはしないらしい
「ね、宇菜ちゃん」
「う…うん」
ここまできたら、どうにでもなれ
半ばやけくそみたいな気持ちで目を瞑ると
「いい子」
そんな声と同時に唇に柔らかいものが触れた