第1章 帰って来た従兄弟
「さっき読んだ漫画で同じシーンがあったよ。嬉しくないの?」
ドキドキと心臓が跳ねる
耳元で囁かれ、ぞわぞわした
「それは…漫画の中の話で…」
「ふーん?じゃぁ、再現しよう。この後はどうするんだっけ?」
「えっ…」
宇菜は更に体を固くした
漫画の続きはよく覚えている
何度も何度も読んだのだ
続きはこうだ、ヒロインがゆっくり振り返って…
「キス、でしょ。宇菜ちゃん」
「……っ」
かぁっ!と顔が赤くなる
漫画の再現ということは、大和はキスをすると言っているのだ
「ねぇ宇菜ちゃん。何回かキスしたことあるよね。忘れちゃった?」
「お、覚えてるよ。でもあれは…」
「子供の戯れだって言うんでしょ。じゃぁ質問を変えるよ。宇菜ちゃん、僕が居ない間に別の男とキスした?」
別の男
なんだかそれが卑猥な響きに聞こえたのは宇菜だけだろう
「してない…してないよ。だって、彼氏とか…いたことないし」
自分で言ってて悲しくなるが事実だ
生まれてから今まで、一度もお付き合いをしたことがない
あまり自慢できる内容では無いが大和は満足そうに声を出す
「いいこだね、宇菜ちゃん。じゃぁ、こっち向いて」
大和の右手が宇菜の頬に伸びる
優しく撫でられたが電流が走ったようだった
「や、大和くん。冗談だよ…ね?」
「冗談?まさか。僕は今、宇菜ちゃんとキスがしたいんだ」
「……っ!?」