第1章 rain of caress
「!・・・・は、ぁ・・」
ナッシュは名無しの感じる耳を何度も甘噛みし、舌を押し当てながら彼女の服に手を伸ばした。
ゆっくりと・・・されど強引に。
邪魔でしかないそれを剥いで、自らもシャツを脱ぎ捨て、無駄のない端麗な筋肉をさらけ出す。
名無しがいつも思うのは、彼が服を脱ぐとき、襟元から見えるだけの首筋の墨が、脱いだことにより腕まで彫られたひとつのアートとして視界に入ること。
その度、胸にざわつきと高揚を覚え、本来両耳に開いた四つの飾りにも惹かれるものがあるというのに、墨に見入りピアスのことを無碍にしてしまう。
伸ばした細い手、指先はいつも、どうしてもピアスよりも紋に触れてしまうのだ。
きっとナッシュ自身の魅力のひとつなのだろう・・・完全に支配され、落ちている。
溺死しないことに精一杯だった。
「あ・・っ、ア・・・ッ・・ゃ・・」
大きな手は、比例して指も太い。
それでもナッシュの示指は、名無しの下着のホックを簡単に外す。
捲り上げて零れた膨らみの片方を口含み、口内で舌を伸ばし舐め回す愛撫は、彼女の身体を幾度となくひくつかせる。
名無しにとって、その愛でが心地好いということをナッシュも無論掌握していたからこそ、行為は執拗に続けられた。
要求された、たったひとつふたつほどのこと・・・声を聞かせろという単純なそれに、素直に首を縦に振ることはできない。
けれど振ったに値する行動を、顔を赤らめ、照れる所作で悟られる。
不覚にも、まるでときめきと形容するような・・・そんな感情を芽生えさせざるを得ないほど、不機嫌なナッシュから求められたまさか要望に、名無しは容易に落とされた。