第1章 rain of caress
「・・・・ッ・・・」
彼の煽りを浴び涙ぐむ名無しは、その雫こそ流さないものの、唇を噛み締めながらその場で葛藤を募らせた。
陰核を擦られたり、口含まれて達するのとは次元が違う。
快楽こそ同じでも、目に見えるものが違え、真性に自分が淫らな女だと、今は自ら認めてしまったようなものだ・・・。
女である以上、いつだってそうじゃない、清廉な存在でありたいと願うのは誰しもそうだろう。
こんな、大切かどうかも分からない男相手にさらけ出す性癖なんかじゃ、決してないというのに――。
「・・・・ナッシュ・・」
「!」
組み敷かれながらも相反する気持ちを心中ぶつけ合う。
鼓動の速さが、どちらを認めるべきかと急き煽る。
結局、名無しは自分の性に逆らうことはできなかった。
しがみついて果てた時点で、きっとこたえは決まっていたのだ。
ただ、一寸の抵抗くらいしておかなければばつが悪いと思っただけ・・・元々望むものなど、欲しいものなど、最初からもう自分で知っていた。
「・・・ふ・・、ぅ・・・っ・・」
絶対に戻れない。
名無しは頭を起こすと、今度は自らナッシュに顔を向けた。
自分の赤らんだ表情を隠す意もこめてそっとキスをし、まずは気持ちを必死に落ち着かせる・・・。
そうして震えた唇を開きながら、願望を静かに、小さな声音で言葉に乗せた。
ナッシュに抱いた、彼への恋心・・・純粋な想いだけはまだ、どうしても心の奥にひた隠しつつ――。
「満足・・なんかじゃ・・・・ない・・、だめ・・ナッシュ、・・・ナッシュ・・、・・・て――・・挿れて・・・」
「!・・・、・・」
「・・、・・ナッシュ・・・」
「オレが・・・。それをオレが・・・断ったら?」
「っ・・・や・・っ、欲しい・・ナッシュ・・・の・・おねがい・・・」
「・・フ・・・ハハッ・・!必死だな名無し・・・。―――そんなにオレ好みの女になるなよ・・」
「・・・?!・・・ッ―――!!あ・・」