第1章 01
事実答えられる質問は大してない。
知っているのは昔の、幼少期の彼であって今の彼ではないのだから周りが持っている情報と何ら変わりないのだし当たり前の話だ。
好きな食べ物など差し入れされそうな、幼馴染みに迷惑が掛かると知れた質問にも答えるわけにはいかないので自ずと対応は限られた。
あまり私も知らないんだよね。これに限る。
それでも何を言おうと、どれだけ受け流そうと寄ってくる後を絶たないのは赤司の人気を物語っているのだと思う。
そうして幼馴染みという関係を羨むのだ。
特別とも言えない、近い割に遠い存在となっていくこの関係の何が良いのか私には理解出来なかった。
幼馴染みは幼馴染みで、それ以上でも以下でもない。
もし幼馴染みでなければ告白して玉砕も出来ただろう。
そうして心をリセットすることだって可能だったはずだ。
けれど家族付き合いが邪魔をする私の立ち位置は邪魔でしかなかった。
何も知らなければ、何も繋がりがなければ余計な苦しみを抱くことだってなかったかもしれない。
知らないことが多い割に、変に彼を知っている事実が一層苦しめてくれる関係なんて、私は望んでいなかった。
何せ、過去を知っていても未来を知ることはないのだから。