第1章 01
聞きたいことがあるのなら本人に直接聞けと思わなくもないが、幼馴染みに近付けない理由は彼自身にある。
容姿端麗、頭脳明晰、高身体能力と中学生にして完璧過ぎる彼はとても近寄りがたい雰囲気を醸し出しているため、クラスメイトであっても先輩が相手であってもあまり人を寄せ付けない。
どうやら萎縮してしまうらしい。
男性にも例えることがあるのかは知らないが、高嶺の花、というやつだ。
そんな彼の名を赤司征十郎という。
彼こそが私の幼馴染みであり、想いを寄せている相手である。
よって本人に話し掛ける勇気が出ない者は多い。
というか、大抵が彼に話し掛けられないようだ。
腐っても幼馴染みの私から言わせてもらえば周囲となんら違いのない少年なのだが、近寄り難い雰囲気を纏っている面は客観的に見ても分からなくないので仕方のないこととも思う。
話し掛けにくい独特の雰囲気を持つ人というのは必ずいるもので、赤司に限った話でもないはずなのに目立ってしまう彼の存在が尚の事近寄り難さを醸し出しているのだろう。
一人で過ごすことに違和感もないであろう幼馴染みも不自由してなさそうだし、本人に助けを求められたわけでもなし、何より余計な口を挟むと面倒なことになりそうなので控えておく。
冷たいと思われるかもしれないが自己防衛だ。
頭の良い幼馴染みも理解しているはずなので構いはしない。
けれど赤司が近寄り難い人なおかげで皺寄せが私の元へやってくる。
彼との関係を口外した覚えもないのに何故知れ渡っているのか不思議でならないが、今は情報源を探るよりも現状を如何に過ごすかが一番の問題なので置いておくことにして、差し障りない回答を並べていった。