第4章 04
何をしているんだろう。
思い直して弁当を映す。
絡んだ視線を逸らすには丁度良いものだった。
それなのに上手くはいかない。
幼馴染みが上手く事を運ばせてはくれなかった。
ふ、と小さな笑みが聞こえて直ぐに顔を上げれば緩く目尻を下げた紅の瞳と交差する。
瞬間、とうとう煩く騒ぎ出す心臓の音が鼓膜に響いた。
熱が一気に上昇していく感覚にまた鼓動が喚く。
もう、止まらない。
それもこれも幼馴染みが悪い。
そんなに優しい眼差しを向けてこられたら、忘れたい気持ちも忘れられなくなってしまうどころか植え付けられてしまう。
嫌でも思い知らされる。私は彼が好きなのだと。
「今は食べよう」
どこまで私を優先する気だ、この人は。
私は昼頃に起き出した挙げ句太陽の光が届かない涼しい部屋の中で特に動くでもなくただ勉強していただけ。
対してこの人は朝から部活動に励み更にはこれから部長としての仕事と、そして生徒会としての職務を全うすべく書類と向き合うのだろう。
忙しい人なのに、私に合わせている時間なんてないだろうに、どうしてそんなにも柔らかな瞳を向けて私を見るの。
無駄な優しさは凶器でしかない。
こんな形で特別を思い知らされるなんて苦痛だ。
なのに嬉しいだなんて、どうかしている。
つい先刻まで愛しささえ感じていたコンビニ弁当が視界に霞んだ。
渦巻く想いを胸に秘めて、二人で向かい合って摂った食事は美味しいのか不味いのか、分かりはしないまま口に運ぶ単調作業と成り果てて終わった。
唯一、軋む胸の痛みだけを鮮明に覚えている。
咀嚼した夕食と一緒に、砕けてしまえば良かったのに。