第1章 01
どうして好きになってしまったのか、なんて抱いた気持ちを否定することはしなかった。
代わりに何故幼馴染みなのかと自分達の関係性を悔いた。
幼馴染みなんて変に近しい関係で、それもここまで拗れていなければ気持ちに蓋をすることなんてなかったのかもしれない。
今の自分たちが特別だと言える関係とは思えないし、自分としても、告白したところで彼と付き合えるなどとは思えなかった。
幼馴染みは名家の子息だった。
一般市民の私が何故そんな雲の上のような身分の人間と家族同然に過ごしてきたのかというと、互いの母親が理由である。
彼の母親と私の母親が親友関係にあり、それぞれが結婚した後も付き合いは続いて、父親も交えて家同士での付き合いが始まり今に至る。
おかげで生まれる前から彼と幼馴染みになる運命だったわけだが、身分を考えると彼はご令嬢と将来を紡ぐのだろう。
幼馴染みなだけの私とどうこうなるとは思えないし、今までが近過ぎたせいもあって家族以上に見られるとも思えない。
何より身分的に難しいことを正しく理解している。
だったら諦めるにも早い方が良いと考えた。
傷は浅いうちに塞いでしまえば回復も早い。
どうせ顔を合わせることもないのだから、このまま想いを消化出来たらと日々を過ごすようになったというのに、彼の噂は毎日のように届いてくるし、何よりクラスメイトが放っておいてくれなかった。
「さんって、あの赤司君と幼馴染みなんでしょ?いいなぁ」
一体どこで知ったのか。
幼馴染みだという情報を得た女生徒たちが少しでも彼の情報を得たいと私に近付いてくるようになった。
口を開けば赤司赤司と煩いことこの上ない。
溜息を吐く数が増えていった。