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【黒バス】幼馴染み。【赤司】

第1章 01


 赤い髪に、赤い瞳。
全てを見透かしていそうな視線に射止められたら時が止まる。
良い意味でも、悪い意味でも、彼と相対する者全員に言えることだと知っているから、少しばかり異様なまでの女子の人気さに否定はしない。
幼馴染みとして他より少しだけ長く過ごしてきた分、多少は彼という人間を知っているからこそ何も言えなかった。

 小さく溜息を吐き出すだけに終わらせる。
それというのも、周囲の気持ちが良く分かるからだ。
距離を作るようになってから知った自分の気持ち。
それは幼馴染みを幼馴染み以上の感情で見ていたもの。
厄介な感情に支配されつつあった心は完全に染められていき、故に今困った事態にあった。

 好きなのだ、幼馴染みが。

 一体いつ生まれて、いつから育んでいたのか分からない。気が付いたら手遅れだった。

 しかし自分で作ってしまった距離が邪魔をして近付くことを阻む。
幼馴染みとの溝は、耳に入ってくる噂も手伝って徐々に深まっていったと思う。
そう仕向けたのは自分だが、距離を正したかっただけで溝を生みたかったわけではなかった。
確かに幼馴染みという特別な立ち位置にいたけれど、異質から正常になるべく努力を重ねた今となっては周囲で色めき立てる女子と大差ない。

 中学に上がってから幼馴染みとは如実に距離が離れていった。
ずっと彼が陣取っていた隣の空間は風が通り抜けるだけだし、繋いでいた手が重なることはない。
通う学校が同じでも校内で擦れ違う機会は少なく、部活動に勤しむ彼と生活スタイルが噛み合うことなど皆無で顔さえあまり合わせていなかった。
毎日一緒だった幼馴染みとは頻繁に話すことなんてなくなり、寧ろ最後に交わした言葉が朧げなほどで声さえ聞いていない。
彼の活躍を知るのは交流のある母親からか校内で耳にする噂だけ。本人から直接聞くことはなかった。
変わってしまったのだ、関係が。
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