第4章 04
そもそもがおかしい。
夕飯は各自で済ませる旨を送ったはずだ。
わざわざ来る必要性を感じない。
何か用事があったとして、それこそメール一つで事足りるだろう。
大体、挨拶もおかしいのだ。
ここは私の家であって彼の家ではないというのに、ただいまとは何なんだ。
正解はお邪魔しますだと知能が高い彼なら分かるだろうに何を言っているのやら。
「…おかえり」
それでも返してしまう私は毒されている。
声にすることで平静を取り戻し始めた私は、まるで我が家の如き態度で返事も待たずに上がってきた幼馴染みの背中を追い掛ける形でリビングへと向かった。
人のいないリビングは窓から差し込む橙の色を受けて多少の明るさを保ってはいたものの少し薄暗い。
リビングの入口となる扉付近に設置されたスイッチを押して人工的な明るさを得た。
タイマー機能を使ったのは正解だったようで涼しさは損なわれていない。
とはいえ徐々に支配されつつある暑さを排除するためエアコンを起動させた。
たった今机の上に置かれたのだろうビニール袋が音を奏でたが今は無視をして窓に歩み寄る。
時間が時間だし暗くなってきたので構わないだろうと判断した私は迷わずシャッターを閉めて遠慮はなしにカーテンまでをも閉め切った。
簡単に戸締りを済ませたら次にキッチンへ向かう。
麦茶を注いだグラスを二つ用意してリビングに戻れば机の上にはコンビニで買ってきたらしい食事が並べられていた。
各自の用意と確かに言ったはずだし、彼に限って言えば家で摂る食事の方が格段に美味だろう。
それなのに、何故。