第3章 03
学期末試験が催され答案用紙が返却された現在、これで一年を幾つかの学期分に分けられたうち一つが区切りを付け、夏季の長期休暇へと突入しようとしていた。
夏休みがやってくるのだ。
一ヶ月以上にも及ぶ長い休みは心を弾ませてくれる。
受験生である私を含めた中学三年生勉強浸けな毎日になりそうだが、それでも登校しなくても許される日々は快適なものだろう。
かく云う私も楽しみにしていた。
けれど楽しみの前に試練とも言える状況に囲まれている。
毎度試験が行われる度に起こる事態だ。
自然と溜息も尽きないというものだった。
帝光中学校では試験成績順位を掲示板に掲載される仕組みになっていて、自分の順位を自分の目で確認することが出来た。
人数が多いため上位百位までと限られてはいるが結果を見ようとして集まる生徒は少なくない。
そうして学年一位の名前が生徒の目に映り込む率は非常に高かった。
入学時から一位の座に在り続けた人物こそ私の幼馴染み、赤司征十郎であるため、本人に直接話し掛けられない周囲はこぞって私の元へ集まり出す。
結果報告から始まり、やれ凄いだの、やれ格好良いだのとのたまう女子の群れの出来上がりだ。
ちなみに、私は赤司の成績順位を見に行ったことがないので毎回知ることはない。
それというのも彼が一位を独占することが予想出来ていたからだ。
名家の彼が部活に力を入れているとはいえ勉学を怠るとも思えない。
実際に小学生の頃も学年首位を独占していた過去を知っている。
好きなスポーツに力を入れるべく尚の事成績を落とすことはしないと分かっていた。
凄いとは思えど、分かり切った幼馴染みの結果をわざわざ確認しに行く気にはなれずに自分の順位だけを目にして終えるだけ。
いちいち私の意思に関わらず聞いてもいない赤司の結果を教えてくれる人等がいるので、尚更知る必要もなかった。