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【黒バス】幼馴染み。【赤司】

第2章 02


 何を言いたいのか知りたくて赤司の顔を覗き込んだ。
もう一度吐き出される溜息にそろそろ苛立ちを感じ始めた私の手から荷物を奪われて軽さが戻る。
食材を詰め込んだ重いエコバッグを持ってくれるらしい。
家に辿り着くまで返す気もないだろうし、素直にそのまま持ってもらおうとして開こうとした口は、しかし薄く開いただけで幼馴染みの声に遮られた。

「陽の暮れた時間に、そんな薄着で外出というのは感心しないな」

 無言の圧はこれだったか。
思わず顔を顰めてしまった私はきっと悪くないはずだ。

 赤司と私は急激に会う機会が減っただけで、私が距離を置きたがったというだけで仲が悪いわけではない。
こうして顔を合わせれば話すし、喧嘩をしたことなど過去を振り返ったところで一度もない。
私の中で幼馴染みから特別な人となった今も、想いを彼方へ忘却する期間が先送りになっていくけれど会えれば矢張り嬉しかった。
好きな人と過ごす時間を嫌う人などいないだろう。
幼馴染みとしても、特別な想いを抱いた相手としても、昔に比べてあまり会わなくなった赤司と同じ空間にいる喜びは胸を温かくしてくれる。
とはいえ、叶わない想いなので痛みも同時に襲ってくるわけだが。

 兎にも角にも、幼馴染みとしての仲は良好である私たちは変わってしまったものが多い中、互いを名前で呼び合っていることと心配性な面は唯一不変である。
名前に関しては物心付いた時には既に呼び捨てていたくらい定着してしたし、今更苗字で呼ぶのも違和感しか生じずにそのままにしているだけの惰性だった。
彼の名前は少しばかり長くて呼びにくいので、時に愛称で呼ぶこともあるが苗字で呼び掛けたことは一度もないように思う。
家族ぐるみで付き合うようになると彼の両親に対しても名前に敬称を添えて呼ぶようになるもので、これは私たちの例なので一概にとは言えないけれど、全員が名前で呼び合っている中で唐突に苗字を多用するなんて訝しまれるだけだ。
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