第6章 腐った世界
【秘密】
-雅紀side-
「ゆう。俺、病院寄ってからバイト行ってくっから。
メシ食ったら戸締まりして寝ろよ」
食べたカレーの皿を洗い桶に浸けて、
慌てて準備をすると、家を飛び出した
中学生の弟を、1人残して出掛けるのには気が引けたけど、
そうも言ってられない状況で‥‥
生活費や学費もだし
入院費だって必要だ
貯金なんてないようなもんだし、
その上、オヤジの借金まで降りかかってきた
正直、高校なんて行ってる場合じゃないけど
それだけは、って母ちゃんに泣いて説得された
夕方からの酒屋のバイトと、早朝の新聞配達だけじゃ‥‥
何とかなるって、そんなワケにもいかなくて
自転車を漕ぎながら、
たまに目に入る電柱に貼ったイカガワシイ仕事のビラ
マジマジ見ちゃったりなんかして‥‥
「それはなぁ…ダメだよなぁ」
足りない頭でグルグル色んな事考えて‥‥
そんな時だった
新聞配達から帰って来て、玄関ドアを開けた足元
見覚えのない茶封筒が落ちてて
中を覗くとそこには
‥‥数枚の万札
最初は、
母ちゃんが置いてたお金が、
何らかでココに紛れたのかな‥‥なんて思った
だけど、
それは毎日当たり前のように届いて
明らかに、誰かがしてる
何となく母ちゃんやゆうに聞いてみても、
知らない風だったし‥‥
俺の机の引き出しの奥には
手付かずのままの茶封筒が、ドンドン増えて行く
怖い半面
警察に届けるのも、なんか出来なくて‥‥
新しい封筒を重ねる度
誰にも言えない秘密がおんなじだけ増えて
不安で仕方なかった
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