第1章 終わりの始まり
【バカな手帳】
誰もいない部屋
飾り気のない鍵をテーブルに置き
制服の上に羽織ったコートを脱いだ
無造作に放ると、椅子の上から滑り落ち
存在を思い出させるかのように、
ポケットに入ってたそれは、床の上で主張する
「‥‥‥‥」
さっき拾ったばかりの生徒手帳
同級生っつっても、教室は離れてるし
毎日真面目に通ってるワケじゃない
他人に興味なんてないしね
……すれ違った事くらいあったのかもしんないけど
パラパラ捲ると、メモにでも使ったのか、時々ページは破られてる
汚い字で"100えんかえす"とか、"たいそうふく"なんて(漢字使えよ)書いてるし‥‥
「プッ‥‥アイツ、手帳までバカ丸出しだな」
そのバカ具合で、写真の真面目な顔まで、笑けてくる
「明日、返してやっか。‥‥っ」
静かな部屋だ
鍵を差し込んだだけで、空気が変わる
微かな音が、確かに聞こえて‥‥
廊下から足音が近づいてく
ふぅっ‥‥と小さく息を吐き‥‥
この部屋に繋がるドアがゆっくりと開かれ
覗いた顔に、
作り笑顔を向けた
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