第1章 終わりの始まり
【キッカケ】
どんなヤツか、よくも知らないのに この間の一件だけで、
ヤツの表情が安易に想像出来た
あ~
ヤツには悪いけど‥‥
可笑しすぎるでしょ
「私ね、二宮くんが好きなの。頭良くってカッコイイし」
はい?
二宮くん?‥‥俺?
「えっ‥‥二宮くんて、あの二宮くん?」
「あの‥‥って?」
「保健室で‥‥あっ!チガウ!コッチの話」
バカだ!
やっぱコイツ、バカだ
まじ‥‥勘弁してよ ‥‥最強だな
口元を覆って、必死で込み上げる笑いを我慢した
「だからっ‥‥相葉くんじゃ、ダメなの」
「えっ!それって俺が‥‥頭悪くて、カッコ悪‥‥」
……の言葉は無視され
パタパタと駆け出す音が遠退く
滑りの悪そうなドアの音と
「ちょっ‥‥!待っ‥‥」
アイツの情けない声
一瞬にして、張り詰めた空気の緊張感が解けた
「うわうわ!どーしよ!チガウのに~!!」
何がチガウんだよ?
ん?
心ん中で聞いた俺にヤツの独り言は ご丁寧に答えてくれる
「風間に手紙渡してくれって頼まれただけなのにぃ!」
頭を抱えてしゃがみ込んだと思ったら
ワシャワシャ髪の毛を弄って‥‥
「あ――っ、バイト!」
そう叫びながら、 あっという間に去って行った
「なんっだあれ(笑)」
誰もいなくなった図書室
窓から伸びた夕暮れの光が‥‥ ぽつんと残された、 落とし物を翳す
身体を折り曲げ拾い上げたそれは、
マヌケ面とは程遠い 真面目な顔したアイツが写ってた
「相葉雅紀くんね(笑)」
今日が
俺らのキッカケ、の日