第6章 腐った世界
【半月】
「うーわ、使い捨てじゃん」
汗やらナニやらに塗れたシャツを脱いで、
従業員室の隅に置かれた、ランドリーケースにぶち込んだ
乱れた頭を鬱陶しそうに撫でつける俺を
隣でサトシが笑ってる
「なによ?」
「うんにゃ。今日は弾けてたなって(笑)」
「仕方ないでしょーが。稼ぎに来てんだから。ジジイとだってヤるよ?」
私服のシャツに着替え、
早々に帰り支度を終えた俺に、サトシがまた笑う
「お前さぁ、シャワー浴びてビショビショじゃん。乾かさないの?」
「眠い。早く帰んなきゃ。ガッコあるし」
「真面目なんだな」
「でしょ(笑)」
ぷらぷら手を振って部屋を出た
裏口の重い扉を開けると、冷たい空気で、一気に体が冷える
さっきまで汗かいてたから尚更だな
腕を組んでコートに首を竦み
まだまだ明けない空の下を歩いた
送迎の車もあるけど
ただの運転手でも、これ以上人と関わりを持ちたくない
即金とワガママを通して貰って
帰りに受け取った茶封筒を、ポケットに押し込む
「さっびぃな」
すんっ…と鼻を啜って
‥‥空を仰ぐ
あの日の半月より満ちた月が、
俺を見下ろしてる
ねぇ……
全てが闇に消えぬよう、少しでいいから
俺を照らして‥‥
・