第5章 明暗界線
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「ここで働いて貰うわけにはいかない」
ありゃ、‥‥テスト不合格?
「カズ、お前の望みは?
‥‥いいよ。俺専用で飼ってあげても」
驚いて、思わず2人を見比べた
新しい玩具を見つけて、楽しそうなユウさんと
犯されてさっきまで震えてたガキが、何故か笑ってる
そして、
猫みたいに甘えた声で、ユウさんを呼んだ
「じゃ、お願い事はねぇ。
あの女、早く捨てちゃって?」
ユウさんは微笑み、応えるように頷いた
「代わりになるからって?」
「ヤだなぁ。代わりになんかなんないよ?‥‥俺のがお買い得ってコト」
「楽しみだね」
「でしょ?ハジメテ、緊張しちゃったぁ。
ユウさんもシてよ?」
「今から?」
「今すぐだよ。ペットの躾は早い方がいいでしょ」
ガキのクセに媚びた瞳向けて……
ふぅん、ソレがお前の覚悟ね
下手すりゃ、この店よか地獄かもよ
俺がネクタイを締め
ユウさんに頭を下げた時
ユウさんはだいぶ煽られてたみたいで、
カズの身体に背後から覆い被さった所だった
……ヤツと目が合う
冷や汗が額には滲んでるクセに
やっぱり生意気に口角を上げた
大したもんだよ
だけど、
そんな復讐?やらの為に、中坊のガキが‥‥
こんな裏世界に足突っ込んでさ
最初の潤んだ瞳には、
迷いも恐怖もあっただろうに
それを打ち明ける
友達や恋人は居なかったのかねぇ‥‥
部屋を出て、振り返ったガラスの向こう側では
頼りない身体が揺れてた
儚くて、綺麗で‥‥
ヤられてんのにな
いろんなヤツのそーゆー場面、何度も見てきたのに
俺は何故か、ヤツが忘れられなかった
もしかしたら、
いつかの俺と、重ねてたのかもしれない
※明暗界線とは、
月面上で日光が当たっている所と当たっていない所の境目、をそう呼びます
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