第4章 そして僕等は堕ちてゆく
【茶色いうさぎ】
暫くしてゆうが帰って来て‥‥
わぁわぁ言いながら、雅紀の作ったメシを食った
「風呂入ってくんね。朝早いからさ?いい?」
「おう」
ゆうの宿題を見てる俺に、雅紀はそう言って風呂に行った
「なんだこれ」
同時に『食べて♪』って渡されたりんご
あの時のりんごと同じ
茶色に変色したうさぎ
「生ぬるっ!」
一生懸命剥いたんだろーけど
どうしてアイツは、普通にも出来ないクセに無理するかね?
りんごを頬張った俺に、
コタツを挟んで座ったゆうが、いきなり顔色を変えた
さっきまでは雅紀をからかってたのに、泣きそうな声で話し出す
「和兄‥‥どうしよう」
「ゆう?」
「母ちゃんは入院するし、雅兄も高校辞めるかもしんない」
「え」
「生活費も足りてないし、借金もあるみたいで」
借金‥‥?
雅紀のバイト量からして、事情があるなとは思ってたけど‥‥
「雅紀、なんか言ってた?」
「お前は心配すんなって。大丈夫だからって」
大丈夫って、どうする気だよ
「借金って……」
「詳しい事はわかんないけど、
‥‥死んだ父ちゃんに借金があったとかなんとか」
ゆうの頭を撫でて、
なんの保証もないのに自然と出た言葉
「アイツの言う通りだよ。お前は心配すんな」
中学生のゆうは、
多分ずっと1人悩んでて
家族の事心配して
気付かないフリしてふざけて、笑って‥‥
それで、俺に頼って話してくれたんだ
単純に、どうにかしなきゃって思った
「そろそろアイツ、風呂から出てくっから。泣き止めや」
コクっと頷き、赤い目を擦ってる
どうにかしなきゃ
俺が助けてやんなきゃ
それしか、考えてなかった
茶色いうさぎ
一口齧って
なんか苦しくなった
何、無理してんだよ
『ニノ、どうしよう』って‥‥頼ったらいいじゃん
話したらいいじゃん
1人でどうする気だったんだよ
そりゃ、俺に話したって状況は変わんねぇかもしんないけど
そんなの‥‥わかんねーだろ‥‥
わかんねーじゃん
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