第3章 汚ねぇ大人になるように
【不器用ナース】
「えっと!タオルタオル!
そだ!体温計は?
ポカリも冷えピタもないじゃん!」
無理矢理ベッドに寝かされ
俺の視線の先では、雅紀が忙しなく動き回ってる
「‥‥‥」
「あ~!やっぱ、りんごも買いに行こう!おろしりんご作んなきゃ!」
「‥‥っ!ぶっ!」
思わず吹き出す
おろしりんごなんて、ガキじゃねんだし
「あ~!まだ起きてんの?寝といてって言ったじゃん」
「‥‥寝れっかよ」
こんだけ目の前でウロウロされたら、ねぇ
「仕方ないなぁ~」
ニヤニヤしながら雅紀が近寄る
「な、何だよ‥‥」
「ニノちゃん!トントンしてあげましょうねぇ」
「ちょ!ふざけんな!」
ベッドの脇に、膝を付いてしゃがみ込むと‥‥
俺の胸元を規則的なリズムで、トントンし出した
「寝れないんでしょ?」
「ますます寝れっか!」
笑った雅紀が手を止めると、 ベッドに肘を立て話し出した
「あのさニノ?
俺頼りないと思うけど、少しくらい頼ってよ?」
「‥‥‥」
「勉強教えて、とかは無理だけど」
「それは頼る気ねぇよ(笑)」
「ふふっ。とにかく!俺だって、いないよかマシでしょ」
少し照れ臭そうにしてさ、無邪気に笑う
裏表なんてなくて
ただ俺を、
純粋に心配してくれる
いないよかマシだなんて‥‥
「病人は早く寝なよ?ね?」
「あ~…鬱陶しいな」
グイッと頭まで毛布を被り、雅紀に背中を向けた
どうか、
ホントの俺を知っても
キライにならないで
・