第3章 汚ねぇ大人になるように
【ガラスの涙 1】
ユウさんに振り返り、クッと口角を上げると、
冷や汗をかいた顔色は決して良いわけもないのに‥‥
「いい‥よ‥‥電話なんか、‥‥続けて?」
繋がったまま、背中を反らし
動揺に気付かれないようお強請りする
それでもなお、鳴り響く着信音にイライラしながら
既に限界の腕で身体を支えた
「早く出ないと。‥‥彼でしょ?」
その笑顔に、恐怖さえ覚えた
「彼の事だから、電話にも出ないカズを心配して‥‥」
ドクン‥‥
ドクン‥‥と
体中の血が逆流しているみたいだ
「こんな姿、彼が見たら何て言うだろうね」
ふふっ…とユウさんの笑い声
夜にもならない内から
乱れた制服姿で
四つん這いになって
男を飲み込んでさ‥‥
アイツが、
雅紀が‥‥見たら……
震える右手を、学ランのポケットに入れ
ケータイを掴むと通話ボタンを押した
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