第2章 無限に続く愚かな優しさ
【封印】
「今度は弟いるときおいでよ!対決見せるから」
「なんだよ。対決て」
「‥‥腕相撲?」
笑いながら、靴を履く俺に
「ニノくん、またいつでもいらっしゃいね」
優しい笑顔で、そう言ってくれて
すごく、照れくさかった
帰り道
相葉家でのコトを思い出しながら、ふと思い出す
もう何年も記憶を封印したままだったのにな
だけど 、普段のメシん時でも
クリスマスや誕生日でも
あんな風に
“ハハオヤ”と食卓を囲んだ記憶さえないわ
それどころか俺は、
『母さん』と呼ぶことさえ許されなかったんだから
「和、いい?私の事は名前で呼んで」
「‥‥母さんじゃだめなの?」
「ダメよ。子供がいるってバレちゃうじゃない」
どこに行くのか、
キレイな服を着て、念入りに化粧して
鏡越しに見つめる母さんは、
絵本のお姫様みたいにキレイだった
クラスメートのお母さんとは、全然違う
キレイな母親は自慢だったけど
目の前にいるのに、遠くにいるみたいで
あの膝の上に、甘えて座ることは出来ないんだって
子供心に気づいてた
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