第2章 無限に続く愚かな優しさ
【暖かな場所 1】
コイツも母親似なんだな‥‥
部屋に上げてもらって、
コタツに座るよう座布団まで用意してくれて
目の前にはミカンまで‥‥
「あの、俺」
「ニノくん‥‥よね?
今、あの子起こしたから待ってて頂戴」
「え、起こしたんですか」
「もう来ると思うから」
おばさんがお茶の入った湯呑みを置いたと同時に
襖が開いて、奥の部屋からマサキが顔を出した
「ニノ!」
「おう」
なんか照れくさくて、喉も乾いてないのに熱いお茶を啜る
「じゃ、母さん夕食の準備するから」
「うん」
おばさんは『ゆっくりしてってね』って、俺に笑顔を向ける
目尻に出来るシワが同じだ‥‥と思いながら
俺も頭を下げた
「オマエさ、熱下がったの?‥‥だいぶ濡れたしな」
「ああ!平気!」
「‥‥みたいだな」
「熱はないんだ。どっちかってゆーとね?ハラ痛くってさ‥‥食べ過ぎかな」
確かに、ヤケ食いかってくらい食ってたな
「ニノが俺のために、って買って来てくれたでしょ?嬉しかったんだ」
照れもせず、そう言って笑う
俺のが直視出来ねぇわ
「オマエ、バイトって‥‥」
「ああ。新聞配達?」
「掛け持ち?」
「うん。朝は新聞配達で夕方は酒屋さんね」
何てことないよって顔して、ミカンを剥いてる
高校生で、掛け持ちでバイトなんて、お小遣い目的ではないはず
なんか事情があんだな
「‥‥ってか、ミカンなんか食っていけんの?」
「あ!‥‥ハラ痛いんだった!」
思わずくくっ…と笑うと、雅紀も笑い出す
「良かった!でも、何かあった?
俺よか、ニノのが元気ない顔してたよ?」
コイツのこーゆー所、
やっぱりらしいなって思ってしまった
なんだろな‥‥
昔からオマエとこうして一緒に居た気がするよ
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