第2章 無限に続く愚かな優しさ
【half moon】
暗くなった外を、ガラス越しに眺めると
すっかり雨は止み
暗い空には半月がぽっかり浮かんでた
振り返ると、毛布に体を埋め、
子供みたいに寝息を立てるヤツの姿に 、自然と頬が緩む
‥‥2時間くらい寝てんな
あれだけ雨に打たれたんだ
精神的にも体力的にも限界だったんだろな
不意に思いついて、冷蔵庫を開けてみたけれど
水やお茶くらいしか入ってなくて
(開けるまでもなかったんだけどね)
絶対、腹減って起きんだろな‥‥
“腹減ったぁ~死にそう!”なんつって騒ぐいつもの姿が浮かんで、
音を立てないようにコートを着込んで、
財布を掴み、‥‥もいちどよく寝てんのを確認してから
コンビニに走った
アイツ、好き嫌いなんてねぇよな?
おにぎり、サンドイッチ
カップめんやプリンまで、
目に付くものを、次々カゴに放り込んだ
普段は見もしない、お菓子の陳列棚まで見渡して、
チョコレートやポテトチップ
良くわかんねぇけど、アイツが好きそうかな~‥‥なんて
レジに並んでからも、
寒いんだし温かいもんのがいいか‥‥って、おでんまで買い込んで
両手に持ったビニール袋はパンパンで
今からホームパーティーでもすんのかって、自分で突っ込んだ
だけど、なんだろな‥‥
このくすぐったい感じ
誰かの為に買い物して、
‥‥誰かのいる部屋に帰るなんていつぶりだろう
アイツ‥‥
“うわうわ!これ、全部食べていーの??”
なんて、焼きそばパン頬張る時みたいに、幸せそーな顔してくれるかな
彼女みたいだな‥‥俺
ふ…っと、笑って見上げた空には
さっきと同じように、
月が浮かんで俺を見下ろしてる
満たされない半分の月は、まるで俺みたいだ
だけど
欠けた部分が見えた気がして
ついてくる月を背に
帰り道を急いだ
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