第12章 真昼の月 真夜中の太陽
【sign】
ー雅紀sideー
鬱陶しそうにするニノの背中を見送って……
ドアが閉じるのを確認すると、ベッドに寝ころんだ
「……ってぇ」
何かが背中に当たって、手で探ると
ニノのイヤホンが転がってて
「忘れ物……めずらしいな」
それを掴んで、
ベッドから降りると
追い掛けるように、病室のドアを開けた
スリッパをパタパタ言わせながら、エレベーターの側まで来ると……
見慣れた猫背が見えた
どうしてだろうね
ただそれだけで、
ギュッて苦しくなるよ
後ろ姿に近付きながら、また思う
失敗だよなぁ
どうして俺
あんなに意識が戻らなかったんだろ
傷痕も治るくらいの時間
今さら、どんな顔して
ニノに切り出すの?
もやもやしながら、毎日を過ごして
自分にため息
"はぁ"ってついた途端、
"チーン"とエレベーターの到着音が響いて、ドキッとする
「ニノ!待って…っ!
忘れ物っ!」
俺の声に気付いて、
ニノがこっちに振り向いた
その瞬間、ドクンッて、心臓が跳ねて……
ニノの"へ?"って、無防備な顔を見た途端
何故か……"今だ"、って思った
エレベーターに乗ろうとしている人達の中
俺を見て、立ち止まるニノ
手にしたイヤホンを握りしめたまま、足早に近づき目の前に立つと
不思議そうな顔で俺を見上げる
「雅紀?」
ああ、やっぱ
好きだなぁ
そう思ったら
身体を屈ませて、ニノの顔に近づくと
少し開いた唇に
チュッ…って、キスしてた
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