第12章 真昼の月 真夜中の太陽
【どこにでもある唄】
「あの、じゃあ……僕はこれで」
挨拶をし、施設を出ると
そこには古いマリア像があった
慈愛に満ちたマリア像が、俺を見下ろしている
浄化されるような日々を送りながら……
自分の愚かさを思い知る度に、
確かになる現実
"ひとり"でいる事が、
怖いということ
込み上げる感覚を堪えて、唇を噛み締める
「泣いてるの?」
不意に聞こえた声を辿ると……
足元には、小さな男の子が立っていた
「ははっ…変だね。
おっきいのに泣いたりしたら」
慌てて目元を拭う俺を、
澄んだ黒い瞳が、見つめてる
それはまるで、
"アイツ"を思い出させて……
「悲しい時はね、泣いていいんだよ。
僕もね…パパとママがいなくなっちゃったから、毎日泣いちゃうもん」
「……そっか」
「うん。"ひとり"だから寂しいけどね…たくさん泣いた後は頑張れるんだよ」
「"ひとり"なの?」
屈んで、目線を男の子に合わせた
頭を撫で…ニコリと笑う
「僕もね…"ひとり"なんだ」
「おんなじだね」
「だね。キミの名前は?」
「僕、ジュンっていうの。
お兄ちゃんは?」
俺は弱い
今さら後悔しても、求めても
手に入れられはしないのに……
こんな幼い子に、
何を求めているんだろう
「"翔"っていうの。」
「しょう……?」
「しょーちゃんって、呼んでくれる?」
「しょーちゃん?」
「うん。……ね、"ひとり"同士さ……
僕と……一緒に来る?」
揺れる瞳が、俺を見つめ
小さな手がギュッと繋がれた
握り返して、
もう一度笑った
「おいで」
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