第12章 真昼の月 真夜中の太陽
【キセキ】
ー櫻井sideー
「まさか、あの小さな男の子がこんなに立派になって……」
「いえ…僕も、ここに来た記憶がなくて…」
「ゆうくんが結婚して、一度だけ、君を連れて来た事があってね…」
父さんの育った施設
ここに連れられた記憶はないけど、
ここには、父と俺の思い出が確かに残されていた
「凄く頭のいい子でね。
でも、いつもどこか寂しそうで……だけど君を連れて来た時、ああ…やっと幸せになれたんだって思ったよ」
「……そうですか」
「まさか、ゆうくんが亡くなるなんて……」
「あの、施設への寄付なんですけど……
これまで通り続けさせて下さい。父の遺言なので」
俺は……なんてガキだったんだろう
自分ひとりで全てを理解した気でいて、
何もかも背負ったつもりで、
父さんの事、わかってなかった
今なら、わかる気がする
母さん‥‥
あなたが、父さんを愛した理由が……
"翔、お父さんはね…
不器用なの
人を愛するのが、
ちょっと下手なだけ"
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