第12章 真昼の月 真夜中の太陽
【声】
ーニノsideー
缶コーヒーのプルタブを開け、ゴクゴクと音を立てる
俺が口を離した瞬間、
タイミングを見計らっていたように、櫻井が口を開いた
「……あのさ、雅紀は……まだ……?」
聞き辛そうな櫻井に向き合い、……答える
「ああ、まだだよ。
俺らのせいで無理させたんだ。
ちょっと眠ったくらいじゃ疲れとれないんじゃない」
笑ってみせたつもりだったけど……
やっぱり無理が出てたのか、櫻井は強張った瞳で頷く
出血の割に傷は浅く
外傷はほとんど正常に戻ったものの
何故か意識だけは戻らず、
あれから、2ヶ月が過ぎていた
「雅紀に会ってく?」
「……イヤ、また出直すわ。おばさんのいる時にでも」
「…そ?伝えとくよ。ゆうも会いたがってたし」
「……ああ」
お互いに背中を向け、
俺は、雅紀の眠る病室に向かう
病棟の端にある部屋を、ノックもせずに開けた
「おはよ。
今日はすげー、いい天気だよ」
閉じたままのカーテンを開き、
鞄をテーブルに置くと……
伏せた目蓋に顔を寄せ、唇を重ねた
相変わらず綺麗な顔で、小さな寝息を立てたまま
眠り姫は
なかなか瞳を覚ましてくれない
白馬に乗った王子様じゃないと、無理なのかもね
いつも通りに、ベッドの傍ら
座り心地の悪いパイプ椅子に腰を下ろし
本を開いた
「………ノ…」
気のせいだろうか
今……微かに……
呼ばれたような気がして
開いた本から、
目線を上げると、
「………っ、」
澄んだ綺麗な瞳が、
俺を見ていた
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