第12章 真昼の月 真夜中の太陽
【星の王子様】
「父さんの歪んだ執着心はお前も気付いてんだろ」
「………」
「お前は何も知らず、自ら飛び込んだんだ。
結果、そのせいで……俺の母さんは自殺した」
「嘘……だ」
「嘘じゃない。調べたんだよ。
お前の母親と、お前の存在。だから母さんは……」
記憶の中のあの女は…
母親だなんて、そう思える思い出なんかなくて……
"お母さんって呼んじゃダメなの…?"
"ダメよ。
子供がいるって、バレちゃうじゃない"
………仮に、
それが事実だとしたら、
あの女は……母さんは……
どんな気持ちで、そう言ったんだ?
「お前の父親の葬式に来なかったのも、
その時は病気で亡くなった後だったからだ」
「亡くなった……?」
「そうだ、死んだんだよ」
死んだ……?
「生涯、お前を見守るためだけに生きたんだ。
わざと嫌われて、距離を置いてね……ただ守る為に」
そして、櫻井は
ポケットから、何かを取り出し俺に渡した
えらくクタビレた古い写真には、幼い俺が写っている
誰を見て笑ってた?
ピースして、無邪気に笑う幼い俺自身に、記憶はないけど……
「それでわかるだろ?
愛してもないガキの写真、
そんなボロボロになるまで持ってねぇよ」
俺の……勘違い……?
もしも、どこかで信じてたら……?
「………ったね……
ニノ……」
雅紀が、笑う
俺は………泣いていた
膝の上の雅紀が、俺の頬に手を伸ばし、
指先で拭うと……優しく、微笑む
そして、
力尽きたように、だらんと腕を投げ出した
「っ!…櫻井っ!雅紀が!!
救急車早く呼べっ!」
漸く我に返ったのか、櫻井が救急車を呼ぶ中
血の気のない雅紀の頬を包み、抱き締める
「雅紀……なぁ、……雅紀っ……」
静寂の中、響く自分の叫びに混じって
「……結局、
誰にも愛されなかったのは……俺だけだ」
櫻井の悲痛な声が、
背後で聞こえた
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