第12章 真昼の月 真夜中の太陽
【終わりの足音】
捕まえたタクシーん中でも、不安は大きくなるばかりで
何度掛け直しても
延々と呼び出し音が鳴るだけで、一向に繋がる気配がない
「くっそ……っ!」
櫻井の冷ややかな視線が浮かぶ
同時に、雅紀の、耐えきれずに泣いた顔
切なくて、堪らなく愛しいと感じたその顔は……
ついさっき、見たばかりなのに……
雅紀っ!
雅紀…!!!
………どうか、無事でいてくれ
飛び出したタクシー
あの部屋で一体何が起きてる!?
気ばかり焦って、縺れそうになる脚で自分の部屋に走った
インターホンを押し続け……
それでも、
なかなか反応がないままで……
だけど、しばらくすると、
オートロックが解除された
祈るようにエレベーターに乗り込み、部屋のある階に着いた
逸る気持ちとは裏腹に、
頭に散らつく、最悪のシナリオ
掴んだドアに……鍵は掛かってなくて……
バクバクと心臓が速まる……
開けた瞬間
重い空気が体を纏う
玄関に転んだ男モノの靴を後目に……
廊下に伸びるリビングからの影
引き寄せられるように……足を進める
「雅紀……?」
視界に飛び込んだのは、しゃがみ込んだ櫻井
ギクリとしたその姿は……
月明かりに照らされ、異常だと直ぐに気付く
そして、
壁に寄り掛かる雅紀の姿
慌てて近寄り、顔を覗くと……目蓋を伏せた雅紀が、
………ゆっくりと俺を見て、微かに笑う
一瞬、ホッとしたのも束の間……
「なんっ…だよ、これ!おいっ……雅紀っ!!」
握り締められたナイフ
雅紀の胸元を占める、夥しい血に気付く
「何があったんだよ…ッ!」
雅紀の身体を支えながら、放心状態の櫻井に叫んだ
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