第12章 真昼の月 真夜中の太陽
【見知らぬ顔】
ー雅紀sideー
ギュッと、握り締めた掌に、尋常じゃない汗
「しょ……ちゃ……ん……?」
掠れた声が……
どうにか……零れた
開いたベランダに見える姿
ヤケに生々しく、月明かりに照らされた"それ"……
焦りと動揺で
鼓動が激しく響く
血の気のない
蒼白い顔した翔ちゃんの腕は……
鮮やかな赤に染められてる
何が………あったの?
玄関のドアを、開けた瞬間から感じた空気は……
ますます重くのし掛かる
「雅紀…どうしてお前が……?」
ジリ……と、一歩、
しょーちゃんが俺に近付く
動けなくて、震える指先を……、ぎゅうっと握りしめた
「二宮は……?」
「……っ」
「なぁ?言えよ。あいつがいなきゃ……終わらない」
冷たい、なんて言葉じゃ表せない
その瞳の奥は……
常軌を逸して、
俺の知らない人みたいだった
「雅紀、頼むから……教えてくれ。……頼む」
「なん……で?ねぇ、どうしてニノを……」
「こんなくだらない血は……
不幸の連鎖は、ここで絶たなきゃいけない……!」
まるで譫言みたいに……
しょーちゃんが話し続ける
「わかんないよ……わかんない。
ねぇ、どうして……こんな」
「あの男の血は……
全て消してしまわないと、
……みんな不幸になる」
あの男……?
ユウさん……?
浮かぶのは、その人だけで……
ニノのオジサンだけど、ニノを想ってると言ってたユウさん
しょーちゃんが……?どうして?
「雅紀は、どこまで知ってる?
なぁ……お前だって、あいつのせいで……」
しょーちゃんが、
血に染まった掌で、俺の頬に触れた
ヒヤリとした感触と、確かな血のニオイ
「……雅紀、アイツは何処にいる?
なぁ、言えよ」
促す声と同時に、頬に触れた息は……
温度と反して……
異常に熱く感じた
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