第12章 真昼の月 真夜中の太陽
【Crazy Moon】
ー櫻井sideー
ベランダの手摺りにもたれ、
闇夜に浮かぶ月をボンヤリ眺めながら、
静かに
その時を待つ
研ぎ澄まされた神経を、
より尖らす冷えた夜の空気
もう……何にも
怖くなかった
終わりは直ぐそこだから
無音映画のエンドロールが……
……終わりを告げる
無の空間に……
ピリッと、空気の流れを感じ……
ベランダから見える部屋奥に、
……"ガチャリ"と、
開いたドアの音がした
顔を上げ……
月明かりに映し出された姿に
言葉を失う
ドクンと、大きく揺さぶられた心臓は
あれだけ冷静だった心を掻き乱す
「しょ……ちゃ……ん……?」
不安気な雅紀の表情が、
一瞬にして強張り
俺の右手を凝視した
ゆっくりと右腕を上げ……
それを、月に翳す
鈍く光る刃先から、赤い血が……
無気味に浮かび上がって……
既に赤く染められた掌を、
………雅紀に見せつけた
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