第1章 終わりの始まり
【蜻蛉】
彼女の作った花束を持って、店を後にする
お見舞いなんて嘘だからね‥‥
こうして持ってても意味ないし。邪魔、だよね
しばらく歩いて、店が見えなくなると
近くのコンビニに寄りゴミ箱に捨てるのが決まってて‥‥
だけど今日は、
たまたま清掃中だったから、仕方なく持ち帰った
モノトーンの部屋に 鮮やかに存在感を放つ
花瓶もないから、包まれたままテーブルに置いた
学校が終わって、相葉と校門で別れると、
しばらくしてから同じ道を辿る
自分でも、何してんだって思うよ
だけどさ?
アイツがあまりに単純だから‥‥
「前髪、ちょっと切りすぎたんだって!超可愛いーの!」
「‥‥そうなんだ」
へぇ‥‥
全然、気づかなかった
「恥ずかしそうに、こう前髪隠してさ?」
相葉は、自分の前髪を押さえ、彼女のマネをして見せた
だから‥‥
そんな話、興味ないんだって
「ニノ?ニノはさぁ~、好きな子いないの?」
真っ直ぐに俺を見つめる澄んだ瞳
綺麗な黒に
俺が映る
好きな‥‥子?
「ニノ、モテるもんね」
他人事みたいに言うけどさ?
お前も結構、モテてんだよ?
気づいてないだけでさ
お前とすれ違ったって、大喜びしてる子、何度も見たよ
「オレね~?今日、思い切ってデートに誘おうと思うんだ」
……キラキラ目ぇ輝かせてさ
何とも例えようのない気持ちが、目の前の花に向けられた
俺に向ける同じ笑顔が、ヤツを夢中にしてる
それとも?
俺と相葉じゃ違うっていうの?
置いた花を持ち上げ、一瞬見つめた後‥‥
思い切りテーブルに叩きつけた
ピンクの花びらがちらちらと舞い、
冷たい床に模様を作る
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